日本のワイン

うろ覚えですが、同じワインを3つのグラスに注ぎブラインド・テイスティングをしている動画を見たときのことです。事前に少しだけ情報が伝えられ、どれが美味しかったのかを教えてください、というような内容でした。結果はほとんどの人が一番目のワインと答えていました。ここで改めて思ったのが人間の味覚は不思議だなぁということ。事前に知らされたことに基づいて作られた情報によって、観念が固定化されていくようです。でも、同時に上書き不可となってしまうこともしばしばなんていうこともあります。固定概念にとらわれてしまうと、たくさんの情報が敵となって、素直な葡萄液の音に耳を傾けられなくなるのは悲しいですよね。そんな失敗をしたことが私にもありました。あの日に戻って謝ることはできませんが、いつもおだやかな柔軟性をもっていられるように行動したいと思うきっかけとなったのはワインのおかげです。私をいつも迷宮に誘い込み、でも、その迷宮を楽しむのがワインなのですね。

さて、最近では日本ワインが盛り上がりをみせています。日本ワインの定義ですが、国産ブドウのみを原料とし、日本国内で製造されたものとなります。例えば2013年山梨県に存在するワイナリー数統計は76軒、長野県25軒、そして北海道で22軒でした。ところが、2021年になると山梨県92軒、長野県62軒、北海道53軒と増えていることに驚きます。日本ワインの歴史は世界に比べるととても短いのですが、代々ワイナリーを受け継ぎ伝統を守る作り手、新しい風を吹かせる若手醸造家、世界を知るブドウ栽培家や醸造家のスペシャリスト達が試行錯誤を重ね、日本の風土に合ったワイン造りをしています。ワイナリーを訪れるとそれぞれの理想とするワインが威風堂堂と迎えてくれます。日本のワインって誇らしいですね。そして何より和食に寄り添ってくれるのです。そんな日本ワインを是非味わってみてください。日本のワインというと何となく甘口かなという先入観がありますね。でも、きっと上書きされてしまいますよ。柔軟性を持つことを味方にした私は、その美味しさにいつも頬が緩んでしまいます。パスポートを持たずに訪れることができる場所へ、友人の住む場所へ、ポルシェを走らせ向かう場所へ。その土地を鮮明に想像ができるのもまた日本ワインの醍醐味だと思うのです。

菊鹿シャルドネ 樽熟成 2019

 外観は澄んだレモンイエロー。黄桃、かりん、アプリコット、洋梨、はちみつ、バターやクリーム、アーモンド、白トリュフのような華やかな香りが広がります。程よい酸味と心地の良いミネラル感(塩味)とほんの少しの苦味が美味しさを引き立てます。

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