馬と優しい土とワイン

ある午後のひととき。馬印のワインを飲みながら『量の単位』が思い浮かんできました。なんだか難しいことのようですが、人っておもしろいなあと思ったのです。 オイルの生産量や取引量を樽の数で計り、ヨーロッパでは小麦など食糧の生産量を土地の広さで示し、日本でも主食となる米の石高を富の基準としていました。どんなものにも生活から生み出された単位があるのですね。グラムやキロといった世界共通のしっかりした単位は正確なのですが、ぱっと思い浮かびづらいですよね。アバウトな方がピンとくるっておもしろいですね。 クルマも馬力=Horse Power。人を運ぶ馬車、荷物を運ぶ荷馬車、畑を耕す馬が起点となり、何かを動かすために馬が何頭必要なのかってイメージしやすいですね。また、実利的なことだけでなく、スポーツとしての乗馬や競走馬など様々に使われ、いまでは馬の力で心を癒すホースセラピーというものも注目されています。 そんな馬のパワーを借りて昔ながらの方法で葡萄畑を耕している生産者さんがいることを先日抜栓したナチュラルワインを通して知りました。まさに、今話題のナチュラルワイン。私たちがいただいたのは、フランスボージョレ地方のガメイ種の古木から造られたミッシェル・ギニエ氏の赤ワイン。ワインのエチケットにも馬のイラストが描かれていて生産者の思いが伝わってきます。 彼がこだわっているのは馬で耕す土。馬耕畑の土は優しく、馬糞は天然肥料となって土中の微生物の働きを促し、馬の呼吸により二酸化炭素が葉の光合成に役立つのだそうです。人と馬との関わりは紀元前3500年頃からと言われていますが、長い歴史を経てもこの関わりが不変的なことを改めて感じてしまいます。  優しい土は食を育て、食をは人を育てます。あらゆるものは土の恵みで生かされ土に帰っていきます。でも、いま土の優しさが弱まっているようです。優しい土に生かされた命たちが土を疲れさせてきたことに言い訳はできないのかなと思います。土はサンタクロースのようにプレゼントをくれます。でもサンタクロースは誰からプレゼントをもらうのでしょうか。ここに土本来の優しさをプレゼントするワイン造りがあるような気がします。 優しい土は優しいワインを生んでくれます。枯れた土壌でワインの葡萄をつくるのも定石ですが、その定番の考え方を否定しているのではありません。農耕技術やメカニズムが分からなかった太古とは違い、豊かな知識やメカニズムを手にしたいまだからこそ、それを生かしたワイン造りも定石に負けてはいません。優しい土にこだわる生産者のナチュラルワインをぜひどうぞ。 綺麗なガーネット色にピュアな赤系果実のなかに凝縮された果実味を感じ、ドライフラワーや紅茶の葉、土の優しい香りをお楽しみください。 優しさに包まれるワインは友人との思い出を優しく包んでくれます。その思い出の長さと一緒にあるかのようにゆっくりと開き、艶やかな味わいが広がります。あなたは誰とこの時間を過ごすのでしょう。私は優しい土の味わいに心を溶かして友人を思い浮かべましょう。

Domaine Michel Guignier Moncailleux 2013 / Gamay / Sans Soufre

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